社説:外国人政策 総裁選で分断あおるな|京都新聞

社説：外国人政策　総裁選で分断あおるな｜京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1569624

2025年9月26日 16:05

５人の候補による自民党総裁選で、外国人政策を論点に掲げる主張が際立っている。

ルールを守らない外国人が増えて国民に不安が高まっているとし、受け入れ規制をはじめ「厳格化」を競い合う様相だ。

自民が大敗した参院選で争点となったのを念頭に置くが、外国人に対する根拠のない中傷や差別をあおる危うさを禁じ得ない。

政治や生活の不満のはけ口のように、外国人との摩擦を強調して目をそらせていないか。進む人口減を見据え、共生社会の課題に向き合う冷静な議論を求めたい。

告示日の所見発表演説会では、５候補のうち４人が外国人政策を取り上げた。

小泉進次郎氏は、不法就労や治安の悪化などで「地域の不安につながっている」と主張。茂木敏充氏は「違法外国人ゼロを目指して法令順守を徹底する」と訴え、触法行為や治安状況と結びつけて対策を強化するとした。

中でも高市早苗氏は、演説の半分近くを割き、地元の奈良公園のシカを殴る蹴るなどする外国人がいるとして、強い対処を訴えた。だが、外国人によるシカ危害は根拠不明と指摘が相次ぎ、問われた高市氏は「自分なりに確認した」とするも中身は示していない。

こうした言説には、「日本人ファースト」を掲げた参政党が躍進した参院選を受け、流れた票を取り戻したい思惑がにじむ。

在留外国人は昨年末に過去最多の約３７７万人、年間の訪日観光客数はその１０倍に急増している。トラブルや不愉快な言動を見聞きするなど、疑問や不安を抱く人が増えているのは事実だろう。

そこに交流サイト（ＳＮＳ）で拡散されたデマや誤情報が、憎悪をかき立てている面が否めない。実際の外国人の刑法犯検挙数は、この２０年足らずで３分の１に減っている。

根拠の曖昧な脅威論に乗っかり、外国人管理を強調して分断を深めるのは政権与党のリーダーにふさわしいと言えない。

政府は参院選中に外国人政策の新組織を立ち上げたが、理念を欠く。

人口急減の支え手として、国は新たな「育成就労」制度などで事実上の移民政策を進める。怠ってきた地域住民としての受け入れ施策の充実こそ急務である。

全国知事会は７月、地域の産業や福祉に不可欠な外国人との共生と環境整備を呼びかける「青森宣言」を発表した。排外主義と相容れぬ現実を直視すべきだろう。

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