【帯状疱疹ワクチンの接種で認知症のリスク20.0%低下】英国・28万例超の医療記録を検討

ウェールズでは生年月日に基づく帯状疱疹ワクチン接種資格制度が実施されており、この自然実験を利用することで交絡やバイアスの影響が少ないエビデンスが示されたとしている。

英国・ウェールズで２０１３年９月１日に開始された帯状疱疹ワクチン接種プログラムでは、１９３３年９月２日（基準日）以降に出生した者は１年間ワクチン接種資格を有するが、基準日より前に出生した者は生涯にわたり接種対象外となる。

Ｅｙｔｉｎｇ氏らは、ウェールズの医療データベースＳｅｃｕｒｅ　Ａｎｏｎｙｍｉｓｅｄ　Ｉｎｆｏｒｍａｔｉｏｎ　Ｌｉｎｋａｇｅ（ＳＡＩＬ）Ｄａｔａｂａｎｋから、１９２５年９月１日～１９４２年９月１日に出生し、２０１３年９月１日の同プログラム開始時点で認知症と診断されていないウェールズ在住者２８万２，５４１例を抽出し解析対象とした。

ワクチン接種率は、基準日の１週間前に出生した非接種対象群の０．０１％に対し、基準日の１週間後に出生した接種対象群では４７．２％と有意に上昇した（Ｐ＜０．００１）。

両群は年齢差が基準日前後の数週間のみで、大きな接種率の差を除き系統的な差はなく、交絡因子の問題がない比較が可能であると考えられた。

そこで、この２群による回帰不連続デザインを用い、認知症リスクに対する帯状疱疹ワクチン接種の因果効果を検討した。

その結果、帯状疱疹ワクチン接種により、７年の追跡期間中に認知症と新規に診断される確率は３．５％ポイント有意に低下し（９５％ＣＩ　０．６～７．１％ポイント、Ｐ＝０．０１９）、相対的には２０．０％（９５％ＣＩ　６．５～３３．４％）のリスク低下に相当した。

この帯状疱疹ワクチン接種による認知症の予防効果は性差が大きく、女性でより強かった（７年間の認知症新規診断確率－５．６％ポイント、９５％ＣＩ　－１０．０～－２．５％ポイント、Ｐ＜０．０５）。

Ｅｙｔｉｎｇ氏らは性差の理由として、〈１〉男性における認知症の発症率が低く信頼区間が拡大、〈２〉ワクチンの標的外の作用は男性より女性で強く認められることが多い、〈３〉ワクチンに対する免疫応答や認知症の発症・経過に性差がある可能性－を挙げている。

さらに、別の集団（イングランドとウェールズを合わせた集団）で、認知症の診断タイミングへの依存度が低いデータ（死亡診断書）とアウトカム（認知症による死亡）を用いた解析を行った。

９年間の追跡で同様の効果が確認され、帯状疱疹ワクチン接種対象となることで約２０例に１例の認知症による死亡が回避されたと算出された。

また、帯状疱疹ワクチンは帯状疱疹と認知症以外の死因や併存疾患の発症には影響を及ぼさず、他のワクチンの接種率上昇をもたらさなかった。

帯状疱疹ワクチン接種で認知症リスク低減？　英国・２８万例超の医療記録を検討 | ヨミドクター(読売新聞)

　米・Ｓｔａｎｆｏｒｄ　ＵｎｉｖｅｒｓｉｔｙのＭａｒｋｕｓ　Ｅｙｔｉｎｇ氏らは、英国・ウェールズの２８万例超の電子医療記録を解析した結果、帯状疱疹ワクチン（弱毒生ワクチンＺＯＳＴＡＶＡＸ）接種による認知症の予防効果が示されたとＮａｔｕｒｅ（ ２０２５年４月２日オンライン版 ）に発表した。ウェールズでは生年月日に基づく帯...

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