2万人の犠牲者数は「盛りすぎ」-正しく伝えようとした先人と、その後継者たち 福岡の炭鉱と朝鮮人動員【戦後80年…負の歴史（13）】

２万人の犠牲者数は「盛りすぎ」―正しく伝えようとした先人と、その後継者たち　福岡の炭鉱と朝鮮人動員【戦後８０年連載・向き合う負の歴史（１３）】 | NEWSjp
https://news.jp/i/1313317841875256297

Published　2025/07/13 09:30:00
Updated　2025/07/12 10:21:52

日本最大の石炭産出量を誇った福岡県の筑豊炭田。飯塚市、直方市、田川市、嘉麻市など広大な地域に炭鉱がひしめき、戦時中はフル稼働。過酷な労働に朝鮮人が動員され、戦後も多くの在日コリアンが暮らしている。
田川市の法光寺には、炭鉱事故や病気で犠牲となった朝鮮人を悼む「朝鮮人炭坑殉難者之碑・寂光」がある。その碑文の一部が、歴史家たちから長年、誤りだと指摘されてきた。それは、次の部分だ。

「この筑豊においても石炭採掘の労働力として約１５万人の朝鮮人が強制的に連行されてきました。以降１９４５年までの強制労働と劣悪な環境の中で約２万人が坑内事故や病気で亡くなられました」

指摘は「２万人の死者は多すぎる」という内容。歴史修正は右派からなされるものだけではない。日本の加害の事実を伝えるのに、過剰に「盛る」必要はない―。福岡には、史実を解明しようと努力した先人たちと、その背中を追い、正しい歴史を伝えようとする人たちがいる。（共同通信＝相沢一朗、野口英里子）

▽「あまりに誇大」

筑豊の朝鮮人動員の歴史を調べ、案内している在日韓国人２世の朴康秀（パク・カンス）さん（６１）。普段は北九州市の小学校で国際教育の講師をしている。朴さんは碑文に関して、こう語る。

「約２万人という数字はあまりにも誇大です。１９４４年までの段階で、特別高等警察（特高）の調べで７００人ほどが亡くなっていることが分かっている。それ以降、戦争の激化で動員が増え危険度が増したとしても、推計で１４００～２千人というのが妥当な数字と言われています」

では、連れて来られたという１５万人の数字はどうか。
「福岡県の資料では、県内の炭鉱で約１７万１千人の朝鮮人が働いていたと記録されています。事業所別の資料では８５％ほどが筑豊地方にいたことになり、掛け合わせると確かに１５万人ほどになります」
「市民運動の中で、間違いや誇大な表現がまかり通ってしまうことがあります。無かったことをあったと言うのは、あったことを無かったというのと同じ行為。歴史修正主義と同じです」

▽「丁寧に、丹念に」

法光寺の殉難碑は１９７５年に立てられた。朴さんによると当時、筑豊の在日コリアン社会では、犠牲者の遺骨を祖国へ持って帰ろうとする人たちと、亡くなった日本で供養しようとする人たちとが対立していた。法光寺の住職が仲を取り持ち、その後、碑が建立されたという。以降、碑文は修正されることなく今も設置されている。

筑豊で、歴史に向き合い、正しい事実を伝えようとした先人たちがいる。社会科の高校教員だった歴史研究家、横川輝雄さん（２０２１年に８０歳で死去）もその一人だ。丹念に、地元の朝鮮人の過酷な労働状況、生活実態を掘り起こしていた。朴さんは横川さんの姿勢を参考にしている。

「横川先生は、３人以上が同じ証言をした場合に、それを事実と認定していました。歴史を継承していく立場として、丁寧に、丹念にやっていかないといけない」

▽市民と市、会社が立てた慰霊碑

（中略）

【戦後８０年連載・向き合う負の歴史（１４）「日本人にとって美しい歴史」書き換えの背景には、差別がある】に続く

一般社団法人共同通信社

※全文はソースで。