【何で自分だけ長引くのか】新型コロナウイルス感染後遺症で失職や孤立

新型コロナウイルスの５類に移行から１年。栃木県内ではコロナの後遺症により、日常を取り戻せない人たちがいる。

息苦しさや倦怠（けんたい）感などに日々悩まされ、職を失った人も。

小山市の医療機関では現在も、月に約30人の後遺症患者を診察しており、医師は患者の孤立を懸念する。

働き盛りの年代が多く、「仕事ができなくなるという悩みが圧倒的に多い。復帰に向けたサポートが必要だ」と周囲の理解を求めている。

県南在住の30代女性は約９カ月間、コロナ感染の後遺症に苦しんでいる。

女性は2023年８月、コロナに感染し、過呼吸状態になる過換気症候群を併発した。
コロナの症状がなくなった後も、息を吸っているのにうまく体に入らない感覚に襲われ呼吸が乱れた。横になると辛く、夜はベッドに座って眠った。

鼻の奥の痛みや手足のしびれなども現れた。症状がない時も「また呼吸が乱れたらどうしよう」と不安がよぎり、好きだった遠出も怖くなった。

家族や職場の同僚もコロナに感染したが、周囲で後遺症があるのは自分だけ。「何で自分だけ長引くのか」との思いにかられた。

秋頃にコロナ後遺症と診断され、契約社員として働く職場に診断書を提出した。倦怠感や不眠症のため休みがちで、仕事量を減らした。しかし、上司から「このままは困る」「辞めるか、休職するか、頑張って働くか。どうするのか」と迫られた。

２カ月後、23年度末で雇用契約を終了すると告げられた。

心身の負担が重なり、12月にはパニック障害とうつ病と診断された。女性は「後遺症に悩む人を減らすためにも、コロナを甘く見ず、５類移行後も感染対策をしてほしい」と願う。

コロナの後遺症患者を診察している小山市雨ケ谷町、おぐら内科・腎クリニックの小倉学（おぐらまなぶ）院長（47）は「コロナ感染者の10人に１人が後遺症になるというデータもあるが、明確に後遺症とは分かりづらい。ほとんどの人が治る中、一部の人たちが苦しみ続け孤立してしまう」と危惧する。

30～40代の働き盛りの患者が多く、「倦怠感や（集中力や思考力が低下する）ブレインフォグがあると、仕事ができなくなる。傷病手当金も受給期間が決まっており、退職すると経済的にも追い込まれる。後遺症患者とそうでない人との間で格差が生まれている」と指摘。

職場での後遺症への理解促進に向け、「従業員の症状に目を向けて対応してほしい」と訴えた。

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